PROMISED LAND〜約束の地
SRCL-4603 (REMASTERING:1999/09/08) 1982/11/21 released
01 OCEAN BEAUTY
02 マイホームタウン
03 パーキング・メーターに気をつけろ!
04 ロマンスブルー
05 恋に落ちたら
06 愛しい人へ
07 DJお願い!
08 バックシート・ラブ
09 さよならスウィート・ホーム
10 凱旋門
11 僕と彼女と週末に
自分のなかでは頂点に立つアルバムだと思ってますね。
たとえば『君が人生の時…』までを習作時代とすると、最初のいちばん充実していたアルバムなんじゃないかと思います。
前にも言ったかもしれませんけど、父を亡くしたときに16時間くらいかかって柩を持って帰ったんです。
山口の小さな島なんですけど、そのあいだ、はじめて全部アルバムを通して聞いたんです。
そして、このアルバムを柩の中に入れました。
作ったあとは、あまりにも観念的なものを作ってしまったんじゃないだろうか、等身大以上のものになってしまったんじゃないかという気がしたんですが、時が経ってみるとすごく優れたアルバムだなと思いましたね。
やっぱり『僕と彼女と週末に』がいちばん印象的な曲です。
『マイホームタウン』と。
子どもの頃、川に魚が浮かんだのを見たんですよ。
俺が子どもの頃はちょうど日本の公害時代ですから、そのシーンが目に焼きついていて。
その頃、新聞を読んでいて千葉かどこかで魚が打ち上げられた記事があって、その2つが一緒になったんです。
恋人たちが土曜日にドライブに行って、何気なく真っ黒な海で泳いで、次の日帰ってみると吐き気がしたっていうのを歌にしようと思ったんですけど、シーンが長くてメロディに乗せられなかったんですよね。
本来、語りは好きじゃないんだけど、これは書いたものを削りたくないと思った。
それで話すことにしたんです。
このふたりの恋人たちというのは、ひょっとしたら次の日から入院して何年かして発癌して死んじゃうかも知れないんだけど、そういう、あるワン・シーンですよね。
でも、ある雑誌にリアリティがないと書かれた。
最初にステージでやったときも、観客は何を歌っているんだろうっていう感じでしたね。
極端な笑い話なんですけど、サンドウィッチを食べるシーンがあるんです。
で、あくる日、目が覚めると吐き気がしたというのを「ビールを飲み過ぎたんですか」とか「彼女の作ったサンドウィッチが傷んでたんですか」とか。
こいつ何考えてるんだ、みたいな(笑)、そういう時代だったんですね。
そのときは、ただ笑ってました。
ひきつってましたけど(笑)。
再編集されたDISCOGRAPHYのアルバム解説より
そうは言いつつ、この曲にリアリティなどあって欲しくない、
あってたまるかと、一番に願っていたのも、省吾欲本人ですよね、
でなきゃ、こんな歌詞も歌も、きっと生まれなかったと思っています。
ただ、時代が省吾についてこれなかったが為に、
世間からは奇異に映ったのかもしれません。
省吾も語っているように、私も、ライヴで聴いた時には違和感を感じた観客のひとりです。
♪この地球がどこへ行こうとしてるのか もう誰にも分からない♪
そう歌われるのを聴きながら、省吾がどこへ行こうとしてるのか、
何をどうしたいのか、その瞳は何を捉えているのか分からない・・・って思った私。
きっと、当時の私は、武道館のキャッチコピー
『史上最強の挑戦者・やがて来る時代の光りを僕は見ている』に、
かなり影響を受けていたのではないかな。(笑)
そして、省吾の凄いところは、そんな世間の風当たりの強さにも、全くブレないということ。。。
あれから30年が経って、時代が私たちに警鐘を鳴らし、現実を突きつける。
誰も予想しなかった、彼が一番望んでいなかった事態が起きてしまった今、
この曲を引っ提げてツアーをしている省吾の声を一つも漏らさず受け止めたい。
皮肉な形で、時代が、やっと彼に追いついた。。。